こいと家 便りブログ 

「整えること」平凡な日常を愛し、日々の小さな幸せのつみかさねる。そういったお仕事です。札幌美容師 こいと家。

外出できないなら、家で本を読めばいいじゃない。

 

人生が180度変わるほどの強い影響を受けた本はないかもしれないけれど、これは読んで良かったと思う本は何十冊もありますね。

その時に読んでいる本が、自分の心理状態に与える影響は、どうやら強い様で、ここのところどうにもふざき混みがちだと思ったら、読みかけ途中の小説が、ちょうど湿っぽい展開だった、なんてことがあります。

小説を読んでいない時にまで、その物語の場面場面が頭の中でイメージされているというわけではないのですが、なんとなしに気持ちが引っ張られる。

どうやら自分は、そういう性質を持っているようです。

もちろん良い影響も受けています。

柄にもなく、前向きに過ごしているな、というときは大概がそうですね。

 

読み物によって気持ちをコントロールできるということだから、晴々しい本ばかりを選んで読めばいいということかというと、そういう簡単な話ではないでしょう。

同じものを何度も読んでも、その都度に同じ感動は得られないですから。

初めて読んだときの鮮やかな印象は、やはりそのときだけ。

そういったものも、鮮度が落ちるということがあると思います。

何度読んでも、味わい深いと言える程までの感受性はないのかもしれません。

もしくは、そういった読書の楽しみ方を、自分はまだ知らないだけかもしれない。

 

 

 

先日 『たゆたえども沈まず』 という原田マハさんの本を読みました。

原田さんの本は大好きです。

特に好きなのが、絵画にまつわる芸術、美術系の小説ですね。

元々のお仕事がそういったものに関わっていたようで、絵画についての自分の考えが変わったのは原田さんの小説のおかげでした。 

そもそも絵画というものには全く通じておらず、何をどうみたら良いかも分からない、何をもって良とするかもわからないというような門外漢。

美に携わる美容師として、絵画、美術くらい嗜んでおけよと、もし言われたら、わからないものはわからない、ぼくは絵の美しさよりも言葉の美しさに魅かれるのです。

と、そう答えるかもしれません。

 

そんなぼくの、絵画的美術観を一変させてくれたのは原田さんのとある小説でした。

絵を描く、それを生み出すという行為がいかに険しく厳しい道で、それゆえに絵画が尊く気高く美しくなるものなのかを知りました。

小説を読むことにより、絵画の良さがわかるようになったわけではないですが、その背景を垣間見ることにより、人を魅了する絵画の持つ力の一部だけでも理解できたような気がします。

 

絵画の魅力というのは、技巧的なものはもちろんあるのでしょうが、それ以上に、絵にこめられたエネルギーを感じ取っているのではないでしょうか。

それは喜怒哀楽の様々な感情なのではないかと思います。

そういったものが、見る人の感情に作用する。

心を動かす、とか、琴線に触れる、と言われるような作用ですね。

それを起こし得るのが絵画鑑賞に関する自分の今の見解です。 

 

 

 さて、『たゆたえども沈まず』の内容に全く触れることなく話が進んでおりますが、実は内容にはあまり触れるつもりはありません。

各個人で読んで試されるのがよろしいかと思いますが、ちょっと触っておきます。

 

『たゆたえども沈まず』という作品は先ほどから散々述べていますように、絵画、美術に関する物語です。

フィンセント・ファン・ゴッホをメインに据えた、史実をある程度元にしているフィクションのお話です。

 

この作品もそうなのですが、原田さんの絵画にまつわるものを題材にした小説を読んでいると、その絵を観たくなる。

扱っている絵画は実際に存在するものが大部分のようです。

現代のすごいところが、それがすぐ叶うことですね。

ちょちょっとネットで検索をかければ、大概は観ることができます。

画面のものを観るのと、現物を目で観るのは雲泥の差があるのでしょうが、とりあえず知ることができるというのは素晴らしいことです。

 

フィンセント・ファン・ゴッホの、芸術家特有の鋭いほど強すぎる感受性(芸術家に対する勝手なイメージです)に対して、自分の平凡はありがたいと思えるものでした。

普通って実はとても大切なことなのかもしれない。

普通の幸せが人にとっては一番良いものなんだろうと、そう思いました。

 

 

『たゆたえども沈まず』より抜粋

 

セーヌに受け入れられないのなら、セーヌに浮かぶ舟になればいい、と。

嵐になぶられ、高波が荒れ狂っても、やがて風雨が過ぎればいつも通りのおだやかで、光まぶしい川面にもどる。

だから、あなたは舟になって、嵐が過ぎるのを待てばいい。たゆたえども、決して沈まずに。

 

 

 

 今の騒動が落ち着いたら、美術館に行ってみようかしら。

 

 

 

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お知らせ

 

 

5月は休み多めに設定して、少々大人しくしております。

営業自体はしていますので、ご予約はご相談ください。

 

 

 

 

武田

 

 

 

 

 

 

 

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